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之れを四つの事柄に開きたり。是れ即ち有名なる四因の論なり。四因の一に曰はく素材因、二に曰はく形相因、三に曰はく働力因、四に曰はく目的因是れなり。之れを家屋に譬ふれば材木は素材因なり、家屋の圖案は形相因なり、材木等を取扱ふ工匠等の働きは働力因なり、成り上がれる家(《*》*to live in)は即ち目的因なり。即ちかくの如き家屋の成り上がるは斯くの如き家を造ることを目的として材木を採集し之れに働力を用ゐて一定のを與ふることによる。四因相依りかくの如くにして家を成せど形相因、働力因、目的因の三つは究竟すればの一となるべし。盖し家屋の形と造り上げらるべき家屋といふ目的とは異なるものに非ず、造り上ぐる働力も亦要するに造り上げむとする家屋の想念即ち目的によりて起こるものにして是れまた別異なるものに非ず。故に件の四因を約すれば究まる所、相因と素因との二つに歸すべし。假りに便利上四個を分かち得るは專ら人爲の製作物に於いてのことなり、天然の有機物に於いては其の如く別かち易からず、但だ相素の二因を語るべし。

《アリストテレースの哲學の根本思想は目的說なり。》〔一七〕アリストテレースの哲學の根本思想は目的說なり。以爲へらく、相は