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全體の組織が如何なる部分より成れるかに就きては彼れみづから一定せる說明を下さず。彼れは哲學上の問題を分かちて倫理に關するもの(ἠθικαί)物理に關するもの(φυσικαί)及び論理に關するもの(λογικαί)とせる所あり。然れどもまた彼れは諸般の硏究を分かちて或は行爲上のもの(πρακτική)或は製作上のもの(ποιητική)或は純知上のもの(θεωρητική)とせる所あり。純知上のものと謂ふは凡そ事物の理を究むること其の事を目的とし、製作上のものと謂ふは技術及び美術上の製作を目的とし、實踐上のものと謂ふは吾人の行爲の則るべき規範を揭ぐるを目的とす。〈アリストテレースは純知上のものの部に數學、物理學、及び其謂ふ「第一哲學」即ち純理哲學を置き、實踐上のものの部に、倫理學、經濟學、及び政治學を置けり。然れどもまた彼れは經濟學を以て修辭學と共に政治學に附屬せる學科とし且つ廣義にては政治學の下に凡べて國家及び倫理に關する硏究を總括せり。〉斯くの如く一切の學術を三種に分類するを以てアリストテレースみづからが其の哲學に與へたる分類と見做すが通常なるのみならず此の分類法はまた多くの後世の學者の採用する所となれりしものなるが、茲にアリストテレースの哲學を叙述するには之れを論理學、純理哲學、物理哲學、及び倫理哲學に大別するを以て便利とす。