Page:Onishihakushizenshu03.djvu/276

提供:Wikisource
このページは校正済みです

にプラトーンの晚年の思想に從ひピタゴラス學派の說を混和せむとしたりしを示すものなり。

プラトーン學派と後のピタゴラス學派とは漸々相接近して其の思想大いに相混和するに至れり。一面プラトーン學派の風あり一面ピタゴラス學徒の風ある這般學者間に於いて數學と天文學とは著るき進步をなしたり。親しくプラトーンに師事せしことあるオイドクソス(Εὔδοξος)及びフィリッポス(Φίλιππος)の如きも數學及び天文學に精しかりき。〈地球が其の軸によりて自轉すといふ說を唱へ出でたるはテオフラストスの傳ふる所に從へばシラクウサのヒケタスなり。地球の自轉すると共に太陽を廻轉すといふ說を唱へたるはサモス人アリスタルコス、また此の說に證明を附したるはエリトレ人セロイコスなりといふ。〉

《古アカデミーの傳統。》〔三五〕クセノクラテース歿して後も古アカデミーの傳統は其の首座となれるもの相承けて永く其の學派を傳へたり。凡そ希臘哲學史上特更に一學派と名づけらるゝものはミレートスに起こりしものを初めとして單に相同じき學說を懷けりしものに漠然名づけたる名稱に止まらずして、一首領を中心として相結合して其の說を繼承せる圑體に名づけられたる名稱なりしが如し。殊にピタゴラス學派は宗敎的結合の趣をも具へたる特別の團體なりしこと、さきに其の條下に