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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/261

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的知識に達し得るのみ遍通必然の知識に到達すべからず、自然界の面は定相なき非有なればなり。

《其の『ティマイオス』に說ける所、造化主、萬有の靈。》〔二〇〕プラトーンが『ティマイオス』に說ける所は何處まで譬喩にして何處より然らざるかは辯別し易からず。曰はく造化主(デーミウルゴス、δημιουργός)ありて彼れは一方にイデア即ち萬物の模型を取り他方に定相なき非有を取りて最初に「萬有の靈」を造りたり。此の萬有の靈は諸物の生氣及び精神の本にして凡べてのものを形づくる活動力なり。此の靈先づ地水火風の四元を形づくり天體を形づくり其の他生あるものに至るまであらゆる萬物を形づくれり。此の靈宇宙に瀰漫して何處にても秩序と道理との本元なり。世界が圓滿なる形をなして圓かに回轉するは此の靈あればなり。世界の外圍は恒星の天にして五個の遊星と太陽及び月とが其の下に位し此等皆相伴ひて地球の周圍を廻る。地球は球形をなして世界の中央に位す。

《其の物理說に於けるピタゴラス學派の影響。》〔二一〕プラトーンが天文の說に於いては明らかにピタゴラス學派の影響を見る。又物理の論に於いてもこれを見る。彼れが形體の構造を說くや萬有の靈