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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/182

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等の後に置かざるべからず。又其の說く所が諸種の學科を網羅して宏大なる組織を成せるはソークラテース以前の學說の比にあらず。デーモクリトスの學說はプラトーンの主心說、目的說に對峙すべき唯物說、機械說にして相共に莊嚴なる大哲學をなせる者なるが、但だ唯物的機械說はソークラテース、プラトーン、アリストテレースの相繼いで唱道せる反對の學風の爲めに其の光輝を蔽はれて古代の希臘に於いては其の眞價値の認められざりしなりと。斯くヸンデバンドは論ず。この論なきにあらねど尙ほデーモクリトスを以て大體上物界硏究時代に屬せる者とせむかた穩當なるべし。但しプロータゴラスがデーモクリトスと同鄕の人にして且彼れに先だちて出でしを思へば、ヸンデバンドの意見の如く(ツェラーは之れを承認せざれど)デーモクリトスの用ゐたる主觀的說明を以てプロータゴラスの影響を受けたるものと見るは決して理由なきことにあらず。然れども此の點を以てデーモクリトスがロイキッポスを繼紹してエムペドクレース等と共に物界硏究時代の學流の中に立てる者なることを破するには足らず。彼れが思索の大體の趣は依然として物理派の一人たる也。