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用ゐたり。)

以上陳ぶる所によりて觀ればアトム論は旣にミレートス學派(殊にアナクシメネース)に萌芽せりし機械的說明を最も明瞭に且つ大膽に應用擴張したるものなり。アトムは肉眼をもては見得べからざるほど微小なるものなれど種々の形狀を具ふ。其の形狀に於いては千差萬別無數の種類あり。形狀ἰδέα 又は σχήματα)がデーモクリトスのいふ所によりて觀るにアトムの相異なる最要の點なるが如し。彼れは形狀、順序、及び位置に於いて元子は相異なりといひ又或は其の相異なる點として大さ及び重さをも揭げたり。此等諸點のうち大さとの關係(即ち大さはただの如何に懸かるか否か)に就いては史家其の見解を一にせず。重さ大さの如何(即ち容量の多少)に懸かる。そはアトムは皆その充實すといふことに於いて平等一如、而して此の事以外に其の性體とする所なきを以て同じ容量を有するものは又同じ重さを有すれば也。位置の如何に懸かる、例へば其の形を或は倒まにし或は橫ふるを得。順序は一アトムが他のアトムに對する排列の前後をいふ。一物體の重さと其の體質の密なることとは相比例す、そは密なる程アトムの量