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が映ずればなり、然るに物象は同樣のものには映ぜず唯だ相反するものに映ず。類の相同じきものは激動を生ぜず、故に感覺を生ぜず。吾人が物を視得るは吾人の瞳子は黑きに其の物は光に照らさるれば也。吾人が闇中に物を視得ざるは其の物の色と其の物の映ずべき眼中の部分の色と相同じければ也。苦を以て甘を感じ冷を以て熟を感ずるは皆同じ理に基づけり。かく吾人の感覺は反對の物の相遭ふによりて生ずるが故に如何なる感覺も多少苦痛を伴はざるはなし。故に其の感覺强ければ苦痛も亦加はる。音にまれ色にまれ其の劇烈なるときには苦痛を覺ゆ。
《アナクサゴーラスの學說の特殊の點。》〔七〕不生滅不變化なる幾多の原物を以て森羅萬象の生起及び變化を說明せむとするはアナクサゴーラスがエムペドクレースと其の見を同じうせる所なれど彼れと異なりて性質上の差別を本來無數なりとし世界の千差萬別の物象は素と存在せる性質上の差別の相分かれて現出するなりと說けるは是れ其の學說に於ける一の特殊の點なり。且つ其の說に於いて特に注意すべきはヌウスの論なり。所謂ヌウスは上述せる如く全く物體的性質を脫したる者とは見るべからず、