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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/130

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ばかり之れを分割するも黃金、骨は如何ばかり之れを分割するも骨なるが如し。而して此等性質上判然たる區別を有する無數の種子、是れ原始のものにして性質上單純なるものはむしろ此の原始のものの相混じて生じたるなり。かるが故にアナクサゴーラスによれば性質上單純なるものが相合して複雜なるものを成すにはあらで寧ろ性質上判然たる差別を有する數多の種子の相混合するが故にその相異なる性質の互に沒せられてそが混合體は恰も性質上單純なるものの如く見ゆる也。故にエムペドクレースが單純なる元素と見傲しゝ地、水、火、風もアナクサゴーラスに從へばむしろ複雜なるもの即ち數多の種子の相結合して生じたるものなり。

《異種相分かれ同種相集まる。》〔三〕斯く萬物を形づくる無數の種子は如何なる點に於いて其の性質を異にするぞといふに、アナクサゴーラスは唯だ形に於いて色に於いて又味に於いて相異なりと云ひしのみにて別に詳說せし所なし。さて各種子は相合すれば如何程にも大なるを得べく又分割すれば如何程にも小なるを得べし、無窮に細分せらるるが故に彼此全く相混入するを得。太初此の世界は一切の種子全く相渾融せる