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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/105

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限りあると同時に限りなき、これ自家撞着にあらずして何ぞやと。以上を難雜多の論となす。

《難變動論。》〔九〕次ぎに難變動の論に曰はく(第一)先づ一定の距離について云はむに一物が甲點より乙點に達せむには先づ甲と乙との中央點に達せざるべからず。然るに其の中央點に達せむには先づ其の點と甲との中央點に達せざるべからず。而して又此の中央點に達せむには先づそれと甲との中央點に達せざるべからず。かくして無限の中央點を經過せざる可からざるが故に到底甲點より乙點に達する能はざるべし。

(第二)定まらざる距離については彼れの有名なるアキルロイス龜を追ふの論あり。アキルロイスの韋駄天走りを以てするも到底一步を先んぜられたる龜に追ひつくを得ざるべし。何となれば假にアキルロイスのある處を甲とし龜のある處を乙とし而して龜の速力をアキルロイスの速力の百分の一とせむにアキルロイスの走りて龜のありし乙なる點に達する時には龜は甲點と乙點との距離の百分の一を走りて丙なる點にあるべくアキルロイス更に乙點より丙點に達する時に