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笛を吹く天女の像に
いかるがでらの
堂奧に
尺にもみたぬ天女の像
この天女は笛吹きたまふ
あすか天平󠄁は
遠󠄁き世なりき
色すゝび形かわれど
この天女は笛吹きたまふ
世はうつり
人はかはりぬ
五彩󠄁の雲の座もうせて
この天女は笛吹きたまふ
いかならむ
匠のわざか
いかならむ人のめでしか
この天女は笛吹きたまふ
その吹くは
いかなるうたか
よろこびかはたかなしびか
この天女は笛吹きたまふ
そのねいろ
きくにすべなし
そのおもひわれに通󠄁はね
この天女は笛吹きたまふ
まぶたふせ
くぎやゝかしげ
杳きおもひひたに靜かに
この天女は笛吹きたまふ
やよかなし
ひとの造󠄁りしもの
ひとのすがたに天女さへ似て
この天女は笛吹きたまふ
この天女は笛
吹きたまふ
いかるが寺の堂のおく
若葉に風の光る晝