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弟
――弟益吉は知多半󠄁島の西海岸
なる寒󠄁村小鈴ヶ谷に丁稚奉公をなす
弟の攝りておこせし
十六枚の寫眞われらは見たり
親子三人
蟲のごとつどひて見たり
この家がなんぢのつとむる店か
この海が店の前󠄁なる海か
この突堤にも舟はつくか
このとべるはかもめか
弟よ 汝がわざは
いまだ拙ければ
もののあやめさだかならねど
これら木の葉のごとき
十六枚の寫眞をつづりて
われらは見たり
汝が
かかる店にて貧しき海村の人々に
味噌たまりひさぐなんぢが日々の
いかに寂しきかを
弟よ 風邪ひくな
夜はとくいねよ
なんぢが兄は遠󠄁く家鄕にありて
なんぢが村にいづくより早く
春來れかしと祈る