雨蛙
――ルナールまがひ――
雨は僕(ぼく)の帽(ぼう)子の
つばに
音󠄁をたてはじめる
僕(ぼく)のうしろで
もつと大きな雨の音󠄁が
するので
どんな大きな帽(ぼう)子の男かと
ふりむいて見たら
芭蕉(ばせう)だつた
君はその葉の上にゐた
ところで 君が鳴(な)かないならば
僕(ぼく)は大きい芭蕉(ばせう)の綠(みどり)から
小さい君の綠(みどり)を
見分けなかつたらう