殿樣蛙
――ルナールまがひ――
池畔󠄁(はん)の綠(りよく)草の中に
彼草莽︀の臣は
土下座(ざ)してゐる
僕(ぼく)はそのすぐ上で口笛(ぶえ)を
吹いたが
彼はびくともしない
こいつは聾(つんぼ)だな
靑痰(たん)を垂(た)らして
挨拶(あいさつ)に代へたが
依然として通󠄁じない
ぬるぬるした皮膚(ひふ)には
ぬるぬるした痰(たん)は
何の刺戟(しげき)も與(あた)へない