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第二部 『拉廣』の書法
『拉廣』に於いては、聲調を標出することをしない。之は『拉北』に於いても同一である。國語ローマ字に於いて は、(a)についてはa(第一聲)ar(第二聲)aa(第三聲)ah(第四聲)の如く聲調を表はす考案がなされてゐるが、 『拉廣』『拉北』にはこれがないのである(この是非に關しては南邦經濟第十卷一號にのべた)然し、『拉廣』と雖もこ れを全く無視することは出來ず、聲の表示なくしては區別し難い、そして區別を必要とする詞のみは、特別詞として 特殊な考案がなされて居る。例へば、
賣 | mai | (賣る) | 買 | maai | (買ふ) |
佢 | key | (彼) | 姖 | keey | (彼女) |
係。 | xae | (……である) | 喺 | xaai〔ママ〕 | (「在」に囘じ〔ママ〕) |
一 | jeb〔ママ〕 | (一つ) | 日 | jeed | (日) |
個個 | go go | (一個每) | 個個 | goo go | (あれ) |
右にあげてある詞は、發音上特に紛らはしいのを集め、綴法を考慮したものであるが、「佢」と「姖」のみは些か趣を 異する。これは北京語に於ける第三人稱代名詞の區別に同じもので、ただ性の別を明示せんがために外ならない。
〔1〕名詞・代名詞の書法
一切の名詞・代名詞は、それが如何なる組織たるを問はず、連書しなければならない。
一觀念を表示する二つの名詞は、分開して書かねばならない。例へば、
中國學生 | zunggwog xagseng〔ママ〕 |
但し多くの音節の名詞でも、一つの觀念を表示してゐるものは、連書せねばならない。例へば、
帝國主義 | Daegwagzyji〔ママ〕 |
名詞の詞尾たる「仔」zaeは本來の名詞とともに連書しなければならない。例へば、
細蚊仔 | saemenzae |
番鬼仔 | fangwaezae |
代名詞の複數詞尾たる「哋」deiは連書しなければならない。例へば、
我哋 | odei |
你哋 | neidei |
佢哋 | keydei |
代名詞の所有格語尾、嘅geは連書されなければならない。例へば、
我嘅 | oge |
你哋嘅 | neideige |
若しも、geが名詞の所有格を表はす場合には、それは語尾ではなく、後置せられたものであるから、分けて
書かねばならない。例へば、
爸爸嘅朋友 | Bada ge nengiau〔ママ〕 |