Page:Kyoosantoo-Sengen.pdf/90

提供:Wikisource
このページは検証済みです

み映じたのである。

 そこでドイツの學者󠄃たちの仕事はただ、新しいフランス思想を、自分らの古い哲學的良心と調和させるか、或ひはむしろ、自分らの哲學的立場からフランス思想を取りいれようといふのであつた。

 この結合はちやうど、飜譯によつて外國語を取りいれるのと、同じやり方で行はれた。

 昔の僧󠄅侶どもが、古代異敎國の典籍によつて、カトリックの諸聖󠄃僧󠄅の愚傳をつくつたことは、人のよく知るところである。ドイツの學者󠄃は、俗界のフランス文󠄃書に對して、まさにその反對をやつたのである。彼らはフランスの原書に基づいて、自分らの哲學的駄辯を書いた。例へば、貨幣󠄃の作用に關するフランス批評󠄃に基づいて『人間性の離反』を書き、ブルジョア國家に關するフランス批評󠄃に基づいて、『絕對普遍󠄃政治の廢止』を書いたりした。