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 かういふ哲學的用語をフランスの史󠄃的發達󠄃の上に當てはめることを、彼らは行爲の哲學、眞󠄃正社󠄃會主義、社󠄃會主義のドイツ科學、社󠄃會主義の哲學的基礎などと命名した。

 フランスの社󠄃會主義文󠄃書および共產主義文󠄃書は、かやうにして明らかに去勢された。そしてそれらの文󠄃書がドイツ人の手の中で、一階級の他階級に對する鬪爭の意義を失つた時、ドイツ人はそれで『フランス的偏見』を去つたと思ひ、現實の要求でなく眞󠄃理の要求を代表したと思ひ、プロレタリヤの利益󠄃でなく人間性(すなはち一般人間)の利益󠄃を代表したと思つてゐた。しかるにその人間とは、どの階級にも屬せず、現實のものでもなく、ただ哲學的空󠄃想の雲霧の中にのみ存するものであつた。

 かやうに莊嚴な兒戲を試み、賣藥的法螺を吹き立てたドイツ社󠄃會主義も、暫くにして漸くその衒學的な無邪氣さを失つた。