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Page:Kokubun taikan 09 part2.djvu/272

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はだへなどのきよらに肥えあぶらつきたらむは、外の色ならねばさもあらむかし。

女は髮のめでたからむこそ人の目たつべかめれ。人のほど、心ばへなどは物うちいひたるけはひにこそ物ごしにも知らるれ。事にふれて、うちあるさまにも、人の心をまどはし、すべて女のうちとけたるいもねず、身ををしとも思ひたらず、堪ふべくもあらぬわざにもよく堪へ忍ぶは、たゞ色を思ふがゆゑなり。まことに愛着の道その根深く源とほし。六塵の樂欲おほしといへども、皆厭離しつべし。その中にたゞかのまどひのひとつやめがたきのみぞ、老いたるも若きも、智あるも愚なるも、かはる所なしとぞ見ゆ。されば女の髮筋にてよれる綱には、大象もよくつながれ、女のはけるあしだにて作れる笛には、秋の鹿必よるとぞいひ傅へ侍る。みづからいましめて、恐るべくつゝしむべきはこのまどひなり。

家居のつきづきしくあらほしきこそかりのやどりとは思へど、興あるものなれ。よき人ののどやかに住みなしたる所は、さし入りたる月の色も、ひときはしみじみと見ゆるぞかし。今めかしくきらゝかならねど、木だちものふりて、わざとならむ庭の草も心あるさまに、すの子、すいがいのたよりをかしくうちある調度もむかし覺えて、やすらかなるこそ心にくしと見ゆれ。多くのたくみの心を盡してみがきたて、からのやまとのめづらしく、えならぬ調度どもならべおき、前栽の草木まで心のまゝならず作りなせるは、見る目もくるしくいとわびし。さてもやはながらへ住むべき。また時の間の煙ともなりなむとぞうち見るよりもおもはるゝ。大かたは家居にこそことざまはおしはからるれ。後德大寺の大臣〈實定〉の寢殿に鳶ゐさせ