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「嵐のみ吹くめる宿にはなずゝき穗に出でたりとかひやなからむ」
など、よろしういひなして又見えたり。ぜざいの花いろいろに咲き亂れたるを見やりて臥しながらかくぞいはるゝ、かたみに恨むるき〈さカ〉まのことゞもあるべし、
「百草に亂れて見ゆるはなの色は置くしら露のおくにやあるらむ」
とうちいひたれば、から〈二字衍歟〉かくいふ、
「身のあきを思ひ亂るゝ花の上にうちのこゝろはいへばさらなり」
などいひて、例のつれなうよぶ〈けて脫歟〉ねまちの月の山の〈は脫歟〉出づるほどに出でむとするけか〈か衍歟〉しきあり。さまでもありぬべき夜かなと思ふけしきや見えけむ、「とまりぬべき事あらば」などいへどさしも覺えねば、
「いかにせむ山の端にだにとゞまらでこゝろも空に出でむ月をば」〈道綱母〉。
かへし、
「久方の空にこゝろの出づといへば影はそら〈こカ〉にもとまるべきかな」〈兼家〉
とてとゞまりにけり。さて又のわきのやうなることして二日ばかりありて來たり。「一日の風はいかにと〈せカ〉む。例の人はとひてまし」といへばげにとや思ひけむ、ことなし。
「言の葉は散りもやするとゞめ置きて今日はみからもとふにやはあらぬ」
といへば、
「散りきてもとひぞしてまし言の葉をこちはさばかり吹きしたよりに」。