Page:Kokubun taikan 09 part1.djvu/368

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いかゞ御覽ずる」と聞えさせ給ふ御心おちゐことわりなり。

     たふときもの

九條錫杖、念佛の回向。

     うたは

杉たてる門。神樂歌もをかし。今樣はながくてくせづきたる。ふぞくよくうたひたる。

     指貫は

紫の濃き、萌黃、夏は二藍。いとあつきころ夏蟲の色したるもすゞしげなり。

     狩衣は

香染のうすき。白きふくさの赤色。松の葉のいろしたる。さくら、やなぎ、又あをき、ふぢ。男は何色のきぬも。

     單衣は

しろき。緋のさう東の紅のひとへ。衵などかりそめに着たるはよし。されど猶色きばみたる單衣など着たるはいと心づきなし。練色のきぬも着たれど、猶單衣は白うてぞ男も女もよろづの事まさりてこそ。

     わろきものは

詞の文字怪しくつかひたるこそあれ、唯文字一つに怪しくも、あてにもいやしくもなるはいかなるにかあらむ。さるはかう思ふ人萬の事に勝れてもえあらじかし。いづれを善き惡しき