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Page:Kokubun taikan 09 part1.djvu/333

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雪、霰。霙はにくけれど雪の眞白にてまじりたるをかし。雪はひはだ葺いとめでたし。少し消えがたになりたるほど、又いと多うは降らぬが瓦の目ごとに入りて、黑う眞白に見えたるいとをかし。時雨、霰は板屋、霜も板屋、庭。

     日は

入日入りはてぬるやまぎ〈のイ〉はにひかりの猶とまりて赤う見ゆるに、うすきばみたる雲のたなびき〈わたりイ有〉たるいとあはれなり。

     月は

有明。東の山のはにほそうて出づるほどあはれなり。

     星は

すばる、ひこぼし、明星、ゆふづゝ。よばひぼしをだになからましかばまして。

     雲は

しろき、むらさき。黑き雲あはれなり〈六字もをかしイ〉。風吹くをりの天雲。明け離るゝほどの黑き雲のやうやう白うなりゆくもいとをかし。朝にさる色とかや文にも作りけり〈二字たなりイ〉。月のいとあかきおもてに薄き雲いとあはれなり。

     さわがしきもの

はしり火。板屋のうへにて鳥のときのさばくふ。十八日淸水に籠りあひたる。くらうなりてまだ火もともさぬほどに、ほかほかより人の來集まりたる。まして遠き所人の國などより家