Page:Kokubun taikan 09 part1.djvu/332

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といひければ、やがてそれを內裏のうちにて、さしければ、まことに一つは動かさず、一つは動かしけるに、又しるしつけて遣しけり。ほど久しうて七わだにわだかまりたる玉の中通りて左右に口あきたるがちひさきを奉りて「これに緖通してたまはらむ。この國に皆し侍ることなり」とて奉りたるに、いみじからむ物の上手ふようならむ、そこらの上達部より始めて、ありとある人知らずといふに、又いきてかくなむといへば、「大きなる蟻を二つ捕へて腰に細き糸をつけ、又それに今少しふときをつけて、あなたの口に蜜を塗りて見よ」といひければ、さ申して蟻を入れたりけるに、蜜のかをかぎてまことにいと疾う穴のあなたの口に出でにけり。さてその糸のつらぬかれたるを遣したりける後になむ「猶日本はかしこかりけり」とて後々はさる事もせざりけり。この中將をいみじき人におぼしめして「何事をし、いかなる位をか賜はるべき」と仰せられければ「更につかさ位をも賜はらじ。唯老いたる父母の隱れうせて侍るを尋ねて、都にすますることを許させ給へ」と申しければ「いみじうやすき事」とてゆるされにければ、よろづの人の親これを聞きてよろこぶ事いみじかりけり。中將は大臣までになさせ給ひてなむありける。さてその人の神になりたるにやあらむ、この明神の許へ詣でたりける人に、よる現れてのたまひける、

 「なゝわだにまがれる玉の緖をぬきてありとほしとも〈はイ〉知らずやあるらむ」

とのたまひけると人のかたりし。

     ふるものは