Page:Kokubun taikan 09 part1.djvu/218

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やせからめきたるは心いられたらむと推しはからる。よろづよりは牛飼童のなりあしくてもたるこそあれ。ことものどもはされどしりにたちてこそいけ。さきにつとまもられいくもの、きたなげなるは心うし。車のしりにことなることなきをのこどものつれだちたるいと見ぐるし。ほそらかなるをのこ、ずゐじんなど見えぬべきが黑き袴のすそごなる、狩衣は何もうちなればみたる。走る車のかたなどにのどやかにてうちそひたるこそ我が物とは見えね。猶大かたなりあしくて人使ふはわろかりき。やれなど時々うちしたれどなればみて罪なきはさるかたなりや。つかひ人などはありてわらはべのきたなげなるこそはあるまじく見ゆれ。家に居たる人もそこにある人とてつかひにてもまらうどなどのいきたるにも、をかしき童のあまた見ゆるはいとをかし。

人の家のまへをわたるにさぶらひめきたるをのこつちにをるものなどしてをのこゞの十ばかりなるが、かみをかしげなる引きはへてもさばきてたるも、又五つ六つばかりなるがかみはくびのもとにかいくゝみてつらいと赤うふくらかなる、あやしき弓。しもとだちたる物などさゝげたるいとうつくし。車とゞめていだき入れまほしくこそあれ。又さていくにたきものゝ香のいみじくかゝへたるいとをかし。よき家の中門あけてびらうげの車の白う淸げなる、はしすはうの下すだれのにほひいときよげにてしぢにたちたるこそめでたけれ。五位六位などの下がさねのしりはさみてさゝのいと白きかたにうちおきなどして、とかくいきちがふに、又さうぞくしつぼやなぐひおひたるずゐじんの出で入るいとつきづきし。くりや女