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も後れ先だゝじと契らせたまひけるを、さりとも打ち捨てゝはえ行きやらじ」とのたまはするを、女もいといみじと見奉りて、
「かぎりとて別るゝ道の悲しきにいかまほしきは命なりけり。いと斯思う給へましかば」と息も絕えつゝ聞えまほしげなることはありげなれどいと苦しげにたゆげなれば、かくながらともかくもならむを御覽じはてむとおぼしめすに、今日始むべきいのりどもさるべき人々うけ給はれる「今宵より」と聞え急がせば、わりなくおもほしながらまかでさせたまひつ。御胸のみつとふたがりてつゆまどろまれず明しかねさせたまふ。御使の行きかふ程もなきに猶いぶせさを限なくのたまはせつるを「夜中うち過ぐる程になむ絕え果て給ひぬる」とて泣き騷げば、御使もいとあへなくて歸り參りぬ。聞しめすおほん心惑ひ、何事も覺しめしわかれず籠り坐します。みこはかくてもいと御覽ぜまほしけれど、かゝる程にさぶらひたまふれいなき事なれば、まかで給ひなむとす。何事のあらむとも思ほしたらず、さぶらふ人々の泣き惑ひうへもおほん淚の隙なく流れおはしますを怪しと見奉りたまへるを、よろしきことだにかゝる別の悲しからぬはなきわざなるを、まして哀にいふがひなし。限あればれいの作法にをさめ奉るを母北の方「同じけぶりにものぼりなむ」と泣きこがれたまひて御送の女房の車に慕ひ乘り給ひて愛宕といふ所にいといかめしうその作法したるに坐しつきたる心地いかばかりかはありけむ。「空しき御からをみるみる尙おはするものと思ふがいとかひなけれは、灰になり給はむを見奉りて、今は亡き人とひたぶるに思ひなりなむ」とさかしうの