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Page:Kokubun taikan 01.pdf/67

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なくなど思ひ煩はれ給へば、かつはいとものぐるほしく、さまで心とゞむべき事のさまにもあらずといみじく思ひさましたまふ。ひとのけはひいとあさましくやはらかにおほどきて、物深く重き方は後れて、ひたぶるに若びたるものから世をまだ知らぬにもあらず、いとやんごとなきにはあるまじ、いづくにいとかくしもとまる心ぞとかへすがへすおぼす。いとことさらめきて御さうぞくをもやつれたるかりの御ぞを奉り、さまをかへ顏をもほの見せ給はず、夜深きほどに人をしづめて出入などし給へば、昔ありけむ物の變化めきてうたて思ひ歎かるれど、人の御けはひはた手さぐりにもしるきわざなりければ、誰ればかりにかはあらむ猶このすきものゝし出でつるわざなめりと太夫を疑ひながら、せめてつれなく知らず顏にて、かけて思ひよらぬさまに撓まずあざれありけば、いかなることにかと心得がたく、女がたも怪しうやう違ひたる物おもひをなんしける。君もかくうらなくたゆめてはひかくれなば、いづこをはかりとか我れも尋ねむ、かりそめのかくれがとはた見ゆめれば、いづかたにもうつろひ行かむ日を、いつとも知らじとおぼすに、追ひまどはしてなのめに思ひなしつべくは、唯かばかりのすさびにても過ぎぬべきことを、更にさてすぐしてむと覺されず。人めをおぼして隔て置き給ふよなよななどは、いと忍びがたく苦しきまで思ほえ給へば、猶誰となくて二條院に迎へてむ、若しきこえありてびんなかるべき事なりともさるべきにこそは、我が心ながらいとかく人にしむことはなきを、いかなる契にかはありけむなどおもほしよる。「いざいと心やすき所にてのどかに聞えむ」など語らひ給へば、「猶怪しうかくの給へ