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のが心ひとつにもあらぬ人のゆかりに內にも心おきたるさまにおぼしたなり、兵部卿の宮などもゑじ給ふと聞きしを、さいへど思ひやり深うおはする人にて、聞きあきらめ恨みとけ給ひにたなり。おのづから人のなからひは忍ぶることゝ思へど隱れなきものなれば、しか思ふべき罪もなしとなむ思ひ侍る」とのたまふ。かゝる事どもの騷ぎにかんの君の御氣色いよいよはれまなきを、大將はいとほしと思ひあつかひ聞えて、この參り給はむとありし事も絕えきれてさまたげ聞えつるを、うちにもなめく心あるさまに聞しめし、人々もおぼす所あらむおほやけ人を賴みたる人はなくやはあると思ひかへして年かへりて參らせ奉り給ふ。男踏歌ありければやがてその程に儀式いといかめしう二なくて參り給ふ。かたがたのおとゞたちこの大將の御勢ひさへさしあひ、宰相中將ねんごろに心しらひ聞え給ふ。せうとの君達もかゝる折にと集ひ、つゐしようしよりてかしづき給ふさまいとめでたし。承香殿のひんがし面に御局したり。西に宮の女御はおはしければ、めだうばかりの隔てなるに御心の中は遙に隔たりけむかし。御方々いづれとなくいどみかはし給ひて內わたり心にくゝをかしきころほひなり。殊にみだりがはしき更衣たちあまたも侍ひ給はず中宮弘徽殿の女御、この宮の女御、左の大殿の女御など侍ひ給ふ。さては中納言、宰相の娘二人ばかりぞ侍ひ給ひける。踏歌は方々に里人參り、さま殊に賑はゝしき見物なれば誰も誰もきよらをつくし、袖口の重なりこちたく整へ給ふ。春宮の女御もいと華やかにもてなし給ひて、宮はまだ若くおはしませどすべていと今めかし。御前、中宮の御方、朱雀院とに參りて、夜いたう更けにければ六條院