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たる」と問へば、「晝より西の御方の渡らせ給ひて碁打たせ給ふ」といふ。さてむかひ居たらむを見ばやと思ひてやをら步み出でゝ簾垂のはざまに入り給ひぬ。この入りつる格子はまださゝねばひま見ゆるによりて西ざまに見通し給へば、このきはに立てたる屛風も端の方おし疊まれたるに、まぎるべき几張なども暑ければにやうちかけていとよく見入れらる。火近うともしたり。もやの中柱にそばめる人や我が心かくるとまづ目とゞめ給へば、濃き綾のもひとへがさねなめり、何にかあらむ上に着て、頭つきほそやかに小き人の、ものげなき姿ぞしたる。かほなどはさしむかひたる人などにもわざと見ゆまじうもてなしたり。手つきやせやせとしていたうひきかくしためり。今一人はひんがしむきにて殘る所なく見ゆ。白きうすもののひとへがさねふたあゐのこうちきだつ物ないがしろに着なして、紅の腰ひきゆへるきはまて胸のあらはにばうぞくなるもてなしなり。いと白うをかしげにつぶつぶと肥えてそゞろかなる人の頭つきひたひつきものあざやかにまみ口つきいと愛敬づき華やかなるかたちなり。髮はいとふさやかにて長くはあらねどさがりば肩の程いと淸げに、凡ていと拗けたる所なくをかしげなる人と見えたり。うべこそ親の世になく思ふらめとをかしく見給ふ。心地ぞ猶靜なるけをそへばやと、ふと見ゆるかどなきにはあるまじ、碁打ちはてゝけちさすわたり心とげに見えてきはきはとさうどけば、奧の人はいと靜にのどめて「待ち給へやそこは持にこそあらめ。このわたりの劫をこそ」などいへど、「いでこの度は負けにけり。隅の所々いでいで」と、およびを屈めてとをはたみそよそなど數ふるさま、伊豫のゆげたもたどた