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Page:Kokubun taikan 01.pdf/53

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どしかるまじう見ゆ。少し品おくれたり。たとしへなく口おほひてさやかにも見せねど、目をしつとつけ給へればおのづからそばめに見ゆ。目少し腫れたる心地して、鼻などもあざやかなる所なうねびれて匂はしき所も見えず。言ひたつれば、わろきによれるかたちをいといたうもてつけて此の勝れる人よりは心あらむと目とゞめつべきさましたり。賑はゝしく愛敬づきをかしげなるをいよいよ誇りかにうち解けて笑ひなどそぼるれば匂ひ多く見えてさる方にいとをかしきひとざまなり。あはつけしとはおぼしながら、まめならぬ御心はこれもおぼし放つまじかりけり。見給ふかぎりの人はうち解けたる世なくひきつくろひそばめたるうはべをのみこそ見給へ。かくうち解けたる人の有樣かいまみなどはまだし給はざりつる事なれば、何心もなうさやかなるはいとほしながら久しう見給へまほしきに、小君出で來る心地すればやをら出で給ひぬ。渡殿の戶口に寄り居給へり。いと辱しと思ひて「例ならぬ人侍りてえ近うも寄り侍らず」、「さて今宵もやかへしてむとする。いとあさましうからうこそあべけれ」とのたまへば「などてか、あなたに歸り侍りなばたばかり侍りなむ」と聞ゆ。さも靡かしつべき氣色にこそあらめ、童なれどものの心ばへ人の氣色見つべく靜まれるをとおぼすなりけり。碁打ちはてつるにやあらむ、うちそよめきひとびとあがるゝけはひなどすなり。「我が君はいづくにおはしますならむ、このみ格子はさしてむ」とて鳴らすなり。「靜まりぬなり。入りてさらばたばかれ」との給ふ。この子も妹うとの御心はたわむ所なくまめだちたれば言ひ合せむかたなくて人ずくなならむ折に入れ奉らむと思ふなりけり。「紀の