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なかなかさしあたりていとほしかりし事のさわぎにもおもなくて見え奉りけるよと今ぞ思ひ出づるも胸ふたがりていみじう恥しき。大宮よりも常に覺束なき事を恨み聞え給へど、かくのたまふるがつゝましうてえ渡り見奉り給はず。おとゞこの北の對の今君をいかにせむ、さかしらに迎へゐてきて人かうそしるとて返し送らむもいとかるがるしく物ぐるほしきやうなり。かくて籠め置きたれば誠にかしづくべき心あるかと人のいひなすなるもねたし。女御の御方などにまじらはせてさるをこのものにしないてむ、人のいとかたはなるものにいひおとすなるかたちはたいとさいふばかりにやはあるなどおぼして、女御の君に「かの人參らせむ、見苦しからむことなどはおいしらへる女房などしてつゝまず敎へさせ給ひて御覽ぜよ。若き人々のことぐさにはな笑はせ給ひそ。うたてあはつけきやうなり」と笑ひつゝ聞え給ふ。「などかいとさ殊の外には侍らむ。中將などのいと二なく思ひ侍りけむかねごとに堪へずといふばかりにこそ侍らめ、かくの給ひ騷ぐをはしたなく思はるゝにもかたへはかゞやかしきにや」といと恥しげにて聞え給ふ。この御さまはこまかにをかしげさはなくていとあてにすみたるものゝ懷しきさまそひて、おもしろき梅の花の開けさしたる朝ぼらけ覺えてのこりおほかり。げにほゝゑみ給へるぞ人に異なりけると見奉り給ふ。「中將のさはいへど心若きたどりのすくなさなり」など申し給ふもいとほしげなる人の御おぼえかな。やがてこの御方のたよりに佇みおはして覗き給へればすだれ高くおしはりて五節の君とてざれたる若人のあるとすぐろくうちたまふ。手をいとせちにおしもみて、「せうさいせうさい」と