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Page:Kokubun taikan 01.pdf/410

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物などもみいれられずくつしいたくて文も讀まで眺めふし給へるを、心もやなぐさむと立ち出でゝ紛れありき給ふ。さまかたちはめでたくをかしげにてしづやかになまめい給へれば若き女房などはいとをかしと見奉る。うへの御方にはみすの前にだに物近うももてなし給はず我が御心ならひ、いかにおぼすにかありけむ、うとうとしければ御達などもけどほきを今日は物のまぎれに入り立ち給へるなめり。舞姬かしづきおろして、妻戶のまに屛風など立てゝ、かりそめのしつらひなるにやをら寄りて覗き給へばなやましげにてそひ臥したり。唯かの人の御程と見えて今少しそびやかに、やうだいなどのことさらびをかしき所は優りてさへ見ゆ。暗ければこまやかには見えねど程のいとよく思ひ出でらるゝさまに心移るとはなけれどたゞにもあらできぬの裾を引きならし給ふ。何心もなくあやしと思ふに、

 「あめにますとよをかひめの宮人もわが心ざすしめをわするな。みづがきの」との給ふぞ、うちつけなりける。若うをかしき聲なれど誰ともえ思ひなされず、なまむつかしきにけさうじそふとて騷ぎつる後見ども近うよりて、人騷がしうなればいと口惜しうて立ち去り給ひぬ。あさぎの心やましければ內へ參り給ふこともせず、ものうがり給ふを五節にことづけて直衣などさま變れる色ゆるされて參り給ふ。きびはに淸らなるものからまだきにおよすけてざれありき給ふ。帝よりはじめ奉りておぼしたるさまなべてならず世に珍しき御おぼえなり。五節のまゐる儀式はいづれともなく心々に二なくし給へるを舞姬のかたち大殿のと大納言殿のとは勝れたりとめでのゝしる。げにいとをかしげなれどこゝしう美しげな