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Page:Kokubun taikan 01.pdf/409

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 「霜氷うたてむすべる明くれの空かきくらし降るなみだかな」。

おほい殿には今年五節奉りたまふ。何ばかりの御いそぎならねどわらはべのさう束など近うなりぬとて急ぎせさせ給ふ。ひんがしの院には參りの夜の人々さう束せさせ給ふ。殿には大方のことゞも中宮よりもわらはしもづかへのれうまでえならで奉れ給へり。過ぎにし年五節などとまりしがさうざうしかりしつもりも取り添へ人の心地も常よりも花やかに思ふべかめる年なれば、所々いどみていといみじく萬を盡し給ふ聞えあり。あぜちの大納言、左衞門の督、うへの五節には良淸今は近江の守にて左中辨なるなむ奉りける。皆とゞめさせ給ひて宮づかへすべく仰言ことなる年なればむすめを各奉り給ふ。殿の舞姬は惟光の朝臣の津のかみにて左京の大夫かけたるむすめかたちなどいとをかしげなる聞えあるを召す。からいことに思ひたれど「大納言の外ばらのむすめを奉らるなるに、朝臣のいつき娘出したてたらむ、何のはぢかあるべき」とさいなめば侘びて同じくは宮づかへやがてせさすべく思ひおきてたり。舞ならはしなどは、さとにていとようしたてゝかしづきなどしたしう身にそふべきはいみじうえり整へて、その日の夕つけて參らせたり。殿にも御かたがたのわらはしもづかへのすぐれたるをと御覺じくらべえり出でらるゝ心地どもはほどほどにつけていとおもだゝしげなり。ごぜんに召して御覽ぜむうちならしにおまへを渡らせてと定め給ふ。捨つべうもあらずとりどりなるわらはべのやうだいかたちをおぼし煩ひて「今一所の料をこれより奉らばや」など笑ひ給ふ。たゞもてなし用意によりてぞえらびに入りける。大がくの君胸のみふたがりて