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Page:Kokubun taikan 01.pdf/36

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まし。かの瞿麥のらうたく侍りしかばいかで尋ねむと思ひ給ふるを、今にえこそ聞きつけ侍らね。これこそのたまひつるはかなき例なめれ。つれなくてつらしと思ひけるも知らであはれ絕えざりしもやくなき片思なりけり。今やうやう忘れ行くきはに、かれはたえしも思ひ離れず折々人やりならぬ胸こがるゝ夕もあらむと覺え侍る。これなむえ保つまじく賴もしげなき方なりける。さればかのさがなものも思ひいである方に忘れ難けれど、さし當りて見むには煩はしく、ようせずはあきたき事もありなむや。琴の音すゝめりけむかどかどしさも好きたる罪重かるべし。この心もとなきも疑ひ添ふべければいづれと遂に思ひ定めずなりぬるこそ世の中や。唯かくぞとりどりにくらべ苦しかるべき。このさまざまのよき限を採り具し、難ずべきくさはひまぜぬ人はいづこにかはあらむ。吉祥天女を思ひかけむとすれば法けづきくすしからむこそ又わびしかりぬべけれ」とて皆笑ひ給ひぬ。「式部が所にぞ氣色ある事はあらむ。少しづゝ語り申せ」と責めらる。「しもがしもの中には、なでふ事か聞しめし所侍らむ」といへど、頭の君、「まめやかに遲し」と責め給へば、何事を取り申さむとおもひめぐらすに、「まだ文章のしやうに侍りし時、賢き女のためしをなむ見給へし。かのうまのかみの申し給へるやうにおほやけ事をも言ひ合せ私ざまの世にすまふべき心おきてを思ひ煩らさむ方もいたり深くざえのきはなまなまの博士耻しくすべてくちあかすべくなむ侍らざりし。それはある博士の許に學問などし侍るとて罷り通ひし程に、あるじのむすめども多かりと聞き給へてはかなき序にいひよりて侍りしを、親聞きつけて盃もて出でゝ、我が二つの