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繪ども集めらると聞き給ひて、權中納言いとゞ心をつくして軸表紙ひものかざりいよいよ整へ給ふ。やよひの十日の程なれば空もうらゝかにて人の心も延び、物おもしろき折なるにうちわたりもさるべき節會どものひまなれば唯かやうの事どもにて御かたがたくらし給ふを、おなじくは御覽じ所もまさりぬべくて、奉らむの御心つきていとわざと集め參らせ給へり。こなたかなたとさまざま多かり。物語繪はこまやかに懷しさまさるめるを、梅壺の御かたはいにしへの物語名高くゆゑあるかぎり弘徽殿はその頃世に珍しくをかしき限を選りて書かせ給へれば、うち見る目の今めかしき華やかさはいとこよなくまされり。うへの女房などもよしあるかぎり、これはかれはなど定めあへるをこの頃のことにすめり。中宮も參らせ給へる頃にてかたがた御覽じて捨て難くおもほすことなれば、御おこなひも怠りつゝ御覽ず。この人々とりどりに論ずるを聞しめして、ひだり右とかた分たせ給ふ。梅壺の御方には、へいないしのすけ、侍從の內侍、少將の命婦、右には大貳のないしのすけ、中將の命婦、兵衞の命婦を只今は心にくきさうそくどもにて心々にあらそふ。口つきどもをかしと聞しめしてまづ物語の出で來はじめの親なる竹取のおきなに、空穗の俊蔭を合せて爭ふ。「なよ竹の世々にふりにけることをかしきふしもなけれど、かぐや姬のこの世の濁にも穢れず、遙に思ひのぼれる契たかく、神世のことなめればあさはかなる女めおよばぬならむかし」といふ。右は「かぐや姬の昇りけむ雲ゐはげに及ばぬことなれば誰も知りがたし。この世の契は竹の中に結びければくだれる人のことゝこそ見ゆめれ。ひとつ家の內は照しけめど百敷のかし