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御志をも遂げ給ふべき程に、かゝるたがひめのあるをいかにおぼすらむ、御位を去り物しづかにて、世をうらめしとやおぼすらむ、われになりて心動くべきふしかなとおぼしつゞけ給ふにいとほしく、何にかくあながちなる事を思ひはじめて心苦しくおぼしなやますらむ、つらしとも思ひ聞えしかど又懷しくあはれなる御心ばへをなど思ひ亂れ給ひて、とばかりうち眺め給へり。「この御かへりはいかやうにか聞えさせ給ふらむ、又御せうそこもいかゞ」など聞え給へど、いとかたはらいたければ御文はえ引き出でず。宮は惱しげにおぼして御返りいと物うくし給へど「聞え給はざらむもいとなさけなくかたじけなかるべし」と人々そゝのかし煩ひ聞ゆるけはひを聞き給ひて「いとあるまじき御事なり。しるしばかり聞えさせ給へ」と聞え給ふもいとはづかしけれどいにしへおぼし出づるに、いとなまめき淸らにていみじう泣き給ひし御さまをそこはかとなくあはれと見奉り給ひし御をさな心も只今の事とおぼゆるに、故みやす所の御事などもかきつらねあはれにおぼされて、たゞかく、
「わかるとて遙にいひしひとこともかへりてものは今ぞかなしき」とばかりやありけむ。御使の祿しなじなに賜はす。おとゞは御返りをいとゆかしうおぼせど聞えたまはず。院の御ありさまは女にて見奉らまほしきをこの御けはひも似げなからずいとよき御あはひなめるを、內はまだいといはけなくおはしますめるに、かく引き違へ聞ゆるを人知れずものしとやおぼすらむなど、にくき事をさへおぼしやりて胸つぶれ給へど、今日になりておぼしとゞむべきことにしあらねば、事どもあるべきさまにのたまひおきて睦しうおぼす。すりの宰相を