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殊に耳たゝずかし」とていと隈なげなる氣色なるもゆかしくて、「その品々やいかに。いづれを三つの品におきてか分くべき。もとのしなたかく生れながら身は沈み位短くて人げなき、又直人の上達部などまでなりのぼりたる我はがほにて家の內を飾り人に劣らじと思へる、そのけぢめをばいかゞ別くべき」と問ひ給ふ程に、左の馬のかみ、藤式部の丞御物忌に籠らむとて參れり。世のすきものにて物よく言ひ通れるを、中將待ちとりてこの品々辨へ定め爭ふ。いと聞き憎き事多かり。「なりのぼれとも素よりさるべきすぢならぬは世の人の思へる事も、さはいへど猶異なり。又もとはやんごとなきすぢなれど、世にふるたつぎすくなく時世うつろひておほえ衰へぬれば、心はこゝろとして事足らず、わろびたる事ども出で來るわざなめれば、とりどりにことわりて中の品にぞ置くべき。受領と言ひて人の國の事にかゝづらひいとなみて品定まりたる中にも又きざみきざみありて中の品のけしうはあらぬえり出でつべき頃ほひなり。なまなまの上達部よりも、非參議の四位どもの世のおぼえ口惜しからずもとの根ざし賤しからぬが安らかに身をもてなしふるまひたる、いとかはらかなりや。家の內に足らぬ事などはた無かめるまゝに、省かずまばゆきまでもてかしづけるむすめなどのおとしめ難く生ひ出づるも數多あるべし。宮仕に出で立ちて、思ひかけぬさいはいとり出づる例ども多かりかし」などいへば、「すべて賑はゝしきによるべきななり」とて笑ひ給ふを、「こと人の言はむやうに心得ず仰せらる」とて中將にくむ。「もとのしな時世のおぼえうちあひ、やんごとなきあたりの內々のもてなしけはひ後れたちむは更にもいはず、何をして