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かはかばかり短かゝめる世にかくて思ひ定まりなむ、人の恨も負ふまじかりけりといとゞ危くおもほしこりにたり。かの御やす所はいといとほしけれど誠のよるべとたのみ聞えむには必ず心おかれぬべし、年頃のやうにて見過ぐし給はゞさるべきをりふしに物聞えあはする人にてはあらむなど、さすがに殊の外には思し放たず。この姬君を今まで世の人もその人とも知り聞えぬ、ものげなきやうなり。父宮に知らせ聞えてむと覺しなりて、御裳着のこと人に普くはのたまはせねどなべてならぬさまにおぼし設くる御用意などいとありがたけれどをんな君はこよなう疎み聞え給ひて年頃よろづに賴み聞えてまつはし聞えけるこそあさましき心なりけれと、悔しうのみおぼしてさやかにも見合せ奉り給はず。聞えたはぶれ給ふも苦しうわりなきものに思しむすぼゝれてありしにもあらずなり給へる御有樣を、をかしうもいとほしうもおぼされて年頃思ひ聞えしほいなく、なれはまさらぬ御氣色の心うき事と怨み聞え給ふ程に年もかへりぬ。ついたちの日は例の院に參り給ひてぞ內、春宮などにも參り給ふ。それよりおほひ殿にまかで給へり。おとゞ新しき年ともいはず昔の御事ども聞え出で給ひてさうざうしく悲しと思すにいとかうさへ渡り給へるにつけて念じかへし給へど堪へ難くおぼしたり。御年の加はるけにや、ものものしきけさへ添ひ給ひて、ありしよりけに淸らに見え給ふ。立ち出でゝ御方に入り給へれば人々も珍しう見奉りて忍びあへず。若君見奉り給へばこよなくおよすげて笑ひがちにおはするも哀なり。まみ口つき唯春宮の同じさまなれば人もこそ見奉り咎むれと見給ふ。御しつらひなどもかはらずみそかけ