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Page:Kokubun taikan 01.pdf/149

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けれ」とのたまふ。命婦も宮のおもほし亂れたるさまなどを見奉るにえはしたなうもさし放ち聞えず。

 「見ても思ふ見ぬはたいかになげくらむこや世の人の惑ふてふやみ。あはれに心ゆるびなき御事どもかな」と忍びて聞えけり。かくのみいひやる方なくてかへり給ふものから、人の物言ひもわづらはしきを、わりなき事にのたまはせおぼして命婦をも昔おぼいたりしやうにもうちとけむつび給はず人目立つまじくなだらかにもてなし給ふものから心づきなしとおぼす時もあるべきを、いとわびしく思の外なる心地すべし。四月にうちへ參り給ふ。程よりは大きにおよすげ給ひてやうやう起きかへりなどし給ふ。あさましきまでまぎれ所なき御顏つきを、おぼしよらぬ事にしあれば又ならびなきどちはげに通ひ給へるにこそはとおもほしけり。いみじうおもほしかしづく事かぎりなし。源氏の君を限なきものにおぼし召しながら、世の人の許し聞ゆまじかりしによりて坊にもえすゑ奉らずなりにしを、飽かず口惜しう、たゞ人にてかたじけなき御有樣かたちにねびもて坐するを御覽ずるまゝに、心苦しうおぼしめすを、かうやんごとなき御腹に同じ光にてさし出で給へれば、疵なき玉とおもほしかしづくに、宮はいかなるにつけても胸のひまなく易からず物をおぼす。例の中將の君此方にて御遊などし給ふに、抱き出で奉らせ給ひて「皇子たちあまたあれどそこをのみなむかゝるほどより明暮見し。されば思ひ渡さるゝにやあらむ、いとよくこそおぼえたれ。ちひさきほどは皆かくのみあるわざにやあらむ」とていみじく美しと思ひ聞えさせ給へり。中將の