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り來ぬをおろかにや」などあり。宮より「明日俄に御迎へにとのたまはせたりつれば、心あわたゞしくてなむ。年ごろの蓬生をかれなむもさすがに心ぼそう、侍ふ人々も思ひ亂れて」とことずくなに言ひてをさをさあへしらはず物縫ひ營むけはひなどしるければ參りぬ。
君は大殿に坐しけるに例の女君とみにも對めんし給はず。物むつかしく覺え給ひてあづまをすがゞきて「ひたちには田をこそ作れ」といふ歌を聲はいとなまめきてすさび居給へり。參りたれば召し寄せて有樣問ひ給ふ。「しかじかなむ」と聞ゆれば口惜しうおぼして、かの宮に渡りなばわざと迎へ出でむもすきずきしかるべし、をさなき人を盜み出でたりと、もどきおひなむ、その先に暫し人にも口がためて渡してむと覺して、「曉かしこにものせむ。車のさう束さながら、隨身一人二人仰せおきてたれ」とのたまふ。うけ給はりて立ちぬ。君は、いかにせまし、聞えありてすきがましきやうなるべき事、人のほどだに物を思ひ知り、女の心かはしける事と推し量られぬべくはよのつねなり、父宮の尋ね出で給へらむもはしたなうすゞろなべきをとおぼし亂るれど、さてはづしてむはいと口惜しかるべければまだ夜深う出で給ふ。女君例のしぶしぶに心も解けずものし給ふ。「かしこにいとせちに見るべきことの侍るを思ひ給へ出でゝなむ。立ち歸り參りきなむ」とて出で給へば、侍ふ人々も知らざりけり。我が御方にて御直衣などは奉る。惟光ばかりを馬に載せておはしぬ。門打ち敲かせ給へば心も知らぬ者のあけたるに御車をやをら引き入れさせて、大夫妻戶を鳴してしはぶけば、少納言聞き知りて出で來たり。「こゝに坐します」といへば、「をさなき人は御殿籠りてなむ。などかい