云ひ付けて見やう、と留公に向ひ 三「コレ職人 留「ヘイ 三「只今相談致した處が、急の事ゆへ一寸差支へるから、其方一ツつめつてくれ、當家の家來のつもりで、何分賴む宜ひか 留「ヘイ、やツつけますとも有難ヱ 三「其のやツつける抔とぞんざいな口をきいてはならぬ、成る丈ケ言葉を侍らしく致せヨ 留「ヘイ宜しふ御座ゐ、何んでも上へ御の字を附て、下へ奉るを附けたら宜らふ、今日は好御天氣で御座り奉つるとは何うだイ 三「第一侍になるには其頭では叶ぬ、御同役に一寸髮を結てもらヘ、夫れから印半纒を脫ぎコラ〳〵腹掛を取れ、其紋付の着物を着て、帶を乄ろ、ヱー然う下の方へ締ては叶ぬ、モツと上の方へ、夫れから其袴を穿のだが、袴を穿た事があるか 留「馬鹿にしちやア叶ねヱ、是れで二度目だ、一遍は親分の葬式の時に穿ましたヨ 三「何んと云ふがさつな奴だ、シテ其方の名前は何と云ふのだ 留「俺は留公と云ひます 三「只留公ではあるまい、留吉とか留次郞とか、留なんとか云ふのだらう 留「夫れがな、子供の內は留坊で、今では大槪留公、又人におごつてでも