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三 正系的思想の發揮

 生々主義の發展と共に正系的思想の發揮が古事記の根本たることは明かである。へブライの神話も亦此意味あることは固よりである。否寧ろ其の點に於て詳細精確なるものありいふべきである。然るに自ら全知全能なりと稱する所のエホバが代々の司配者に顯はれ、訓戒指導するがために、へブライの全歷史は殆んど此の唯一神の活動の舞臺の如くに見へる。然るに日本に於ては代々の神人其者の活動が主となるのであつて、太卜を以て天神の意を問ふ以外に於て天神の顯示訓戒等のことはない。是れが又獨太の宗敎國民と日本の現世國民との異なる處である。

 古事記に據れば萬世ー系の系統は極めて明瞭である。世々の神人は社會活動の中心である。絕對的の權威を以て君臨せらる。支那古代の神話的時代に於て何等中心的民族なく混々沌々として萬后の相ひ軋櫟するとは全く其の意味を異にする。乃ち古事記ー書は日本國體の基礎を定める所の書であるといふべきで