じゃ承知しねえぞ。千弗より下はお断りだ。』
『あなた。』小柄な男はボンやりしている友吉に向って、『いくら負けましたか。』
『五千弗です。』友吉は小さい声で答えた。
『五千弗ですか。』といって、小柄な男はジムの方に向き直って、『五千弗行こう。』
『よろし。』
ジムは五千弗の
この時に、二人の争いは
『さア、いいか。』ジムはあたりの人達に聞えるように大声を出した。『このカードを切って、ハートのエースを出せば俺の勝〔ママ〕だぞ。』
『もし切れなかったら、俺の勝〔ママ〕だ。』小柄な男は落着き払っていった。彼の
『よし、じゃ、よく見てろ。後で文句をいうな。このカードは今新しいのをお前が封を切って、お前が調べて、お前が混ざ合〔ママ〕したのだぞ。俺は未だ指一本触れてないのだ。種も仕掛も、インチキもありようがねえんだぞ。』
『分った。能書は止しにして、早く切れ。ハートのエースを出せばお前の勝〔ママ〕だ。』
『さア切るぞ。』
稲妻ジムは右手をカードに掛けたが、
『待て。』小柄な男は
『うむ。』
ジムは唇を噛んで、
『どうした、早く切らないか。』小柄な男は嘲けるように促した。
『うむ。』
ジムはもう一度唸って、額に
『さあ、切るぞ。』
と叫ぶと、
『うん。』
と、力を入れると、上から下までカードを残らず真ニツに切り放して終った。
『さア、どうだ。』ジムは威丈高になって、『これでハートのエースを確かに切ったぞ。どうだ、これでハートのエースが切れねえというか。確かに真二つだぞ。』