には緑色の板に赤字で書いてあった文字は、全然読む事が出来なかったのじゃ。あの時、彼には普通の電柱と高圧の電柱とを区別する事が出来なかったのだ。鳥沢治助は実に天才的犯罪者だ。色盲を利用したとは驚くべき犯罪だ」
「では、穴山は鳥沢に殺されたのですね!」
「その通り。穴山は
「で、穴山が万一を思って秘密を托したと云う人間は――」
「ハハハハ、それはわしじゃ」手塚は大きな鼻をうごめかしながら答えました。
「ええッ、あなたが!」
「わしは穴山の復讐をすると共に、鳥沢の隠している財宝を見つけようと思って、あの夜彼の緑林荘に忍び込んだが、早くもそれに気のついた彼は先手を打って、あんな死方をした。わしはもう少しで危い所だった。しかし、わしは最近に彼の機械仕掛を発見して、当局者に教えて置いたから、もう心配はない」
「では」私は少し云い
「そうとも、誰が見ず知らずの他人のために、何の利益にもならぬ事に骨を折る奴がある者か。しかし、君はそんな事で幻滅を感じるのは止めた方がいい、世の中は皆そんな物だから」
「では、ここへこられたのにも何か――」
「そうとも、そう分りが早いと話がし易くて好い。わしは君の弁護に相当骨を折ったが、その代りに君がこの場所を教えてくれた事には感謝するよ」
「え、え、それはどう云う訳ですか」
「君はあの夜鳥沢の云った最後の言葉を覚えているだろう」
「ええ、緑の幸福と富士山の神秘と云った様な言葉でした」
「彼は富士丸の上でもそんな事を云っている。わしはこんな下らない謎を解くのに三年近くかかったよ。簡単な程解きにくいのは謎だからね。緑と云うのは青と黄との混合だ。つまり青黄の間で、富士の神秘とは、富士の裾野に青木ケ原と云う千古の森林がある。つまり青木ケ原を探せと云う事なのだ」
「まるで子供
「いかにもそうだ。しかし、この謎は独立に作ったのではなく、穴山を殺すために緑色にすべてを塗り潰す必要から、緑の手紙を思いついて、世人を胡魔化し、緑色の幸福を高唱した事から、是非緑を基として作らなければならなかったので、苦しい謎しか出来なかったのだろう。もっとも青木ケ原はグリウネワルドから思いついたのかも知れぬ」
「それで、宝は見つかりましたか」
「ところがね、ようやく隠場所を見つけると、先刻君に見せた秘密の日記や、書類見たいなものばかりで、財宝らしいものは何にも出て来ないのだ」
「どうしたんでしょう。誰か掘り出したのでしょうか」
「いいや、天才的計画者である彼は、二重の鍵を作って、青木ケ原にあると見せて、更に安全な所へ隠したのだ」
「そ、それはどこですか」