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愚人以天地文理聖。我以時物文理哲。人以愚虞聖。我以不愚聖。人以奇期聖。我以不奇聖。沉水入火。自取滅亡

其深の理は俗士の窺ふ能はざる所。天地の表面に見はれたる文理を以て聖とし此に於て驚嘆す。我は則ち時物の文理生死恩害の互に伴ふ所を見て以て哲とし、神妙とり。世人は聖人の蹈晦深藏を悟らず。以て愚とす。或は聖人の臨機適宜を解せず。以て奇とす。誤る所以り。眞に聖人を知るものは以て愚にあらず。又以て奇にあらず。理に從ひ、常に行ふものとすのみ。鳥の水に沈み蟲の火に入る、皆自ら滅亡を取る所以。天地の道を究めざるものゝ自ら禍を招く所以亦實に此くの如し。