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しては甘柿がある。それ故「澁味」の對立者としては「甘味」を考へても差支ないと信ずる。澁茶、甘茶、澁糟、甘糟、澁皮、甘皮などの反對語の存在もこの對立關係を裏書する。然らばこれらの對立意味はどういふ內容をもつてゐるか。また「いき」と如何なる關係に立つてゐるか。
(一) 上品―下品とは價値判斷に基いた對自性の區別、卽ち物自身の品質上の區別である。言葉が表はしてゐるやうに、上品とは品柄の勝れたもの、下品とは品柄の劣つたものを指してゐる。但し、品の意味は一樣ではない。上品、下品とは先づ物品に關する區別であり得る。次で人事にもこの區別が適用される。『上品無寒門、下品無勢族』といふときには、上品、下品は人事關