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Page:Iki-no-Kozo.djvu/50

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態として成立する公共圈とは性質を異にしてゐる。さうしてこの二つの公共圈のうち、「上品」および「派手」の屬するものは人性的一般存在であり、「いき」および「澁味」の屬するものは異性的特殊存在であると斷定しても恐らく誤ではなからう。

 これらの意味は大槪みなその反對意味をもつてゐる。「上品」は對立者として「下品」をもつてゐる。「派手」は對立者に「地味」を有する。「いき」の對立者は「野暮」である。たゞ「澁味」だけは判然たる對立者をもつてゐない。普通には「澁味」と「派手」とを對立させて考へるが、「派手」は相手として「地味」をもつてゐる。さて「澁味」といふ言葉は恐らく柿の味から來てゐるのであらう。然るに柿は「澁味」の外になほ「甘味」をももつてゐる。澁柿に對