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層󠄃の全󠄃範圍に亙つて果して「いき」と同樣󠄂の構󠄃造󠄄を示し、同樣󠄂の薰と同樣󠄂の色合とをもつてゐるであらうか。ボオドレエルの「惡の華」一卷は屢々「いき」に近󠄃い感情󠄃を言表はしてゐる。「空󠄃無の味」のうちに『わが心、諦󠄂めよ』とか、『戀ははや味ひをもたず』とか、または『讚むべき春は薰を失ひぬ』などの句がある。これらは諦󠄂めの氣分󠄃を十分󠄃に表はしてゐる。また「秋の歌」のうちで『白く灼くる夏を惜しみつつ、黃に柔かき秋の光を味はしめよ』と云つて人生の秋の黃色い淡い憂愁を描いてゐる。「沈潛󠄄」のうちにも過󠄃去を擁する止揚の感情󠄃が表はされてゐる。さうして、ボオドレエル自身の說明(二五)によれば、『ダンデイズムは頽廢期における英雄主義の最後の光であつて……熱がなく、憂愁にみち