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Page:Iki-no-Kozo.djvu/142

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六 結論

 「いき」の存在を理解しその構󠄃造󠄄を闡明するに當つて、方法論的考察として豫め意味體驗の具體的把握を期した。しかし、すべての思索の必然的制約として、槪念的分󠄃析によるの外はなかつた。しかるに他方において、個人の特殊の體驗と同樣󠄂に民族の特殊の體驗は、たとへ一定の意味として成立してゐる場合にも、槪念的分󠄃析によつては殘餘なきまで完全󠄃に言表されるものではない。具體性に富んだ意味は嚴密には悟得の形で味會されるのである。メーヌ・ドウ・ビランは、生來の盲󠄃人に色彩󠄃の何たる