コンテンツにスキップ

Page:Iki-no-Kozo.djvu/122

提供:Wikisource
このページは校正済みです

らけ茶などがあり、また一定の色合を嗜好する俳優の名から來たものには、芝翫茶、璃寬茶、市紅茶、路考茶、梅幸茶などがあつた。然らば茶色とは如何なる色であるかといふに、赤から橙を經て黃に至る派󠄄手やかな色調が、黑味を帶びて飽󠄄和の度の減じたものである。卽ち光度の減少の結果生じた色である。茶色が「いき」であるのは、一方に色調の華やかな性質と、他方に飽󠄄和度の減少とが、諦󠄂めを知る媚態、垢拔した色氣を表現してゐるからである。

 第三に、靑系統の色は何故「いき」であるか。先づ一般に飽󠄄和の減少してゐない鮮かな色調として如何なる色が「いき」であるかといふことを考へて見るに、何等かの意味で黑味に適󠄃するや