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Page:Iki-no-Kozo.djvu/107

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多く出てゐるためであらう。尤も、橫縞が特に「いき」と感ぜられる場合もないことはない。しかしそれは種々特殊な制約の下に於てである。第一に、さういふ場合は、縱縞と相對的關係をもつてゐる。卽󠄁ち、縱縞にくくりを附けてゐるやうなときに、橫縞は特に「いき」と感ぜられる。例へば縱縞の着物に對して橫縞の帶を用ひるとか、下駄の木目または塗り方に縱縞が表はれてゐるとき緖に橫縞を用ひるとかいふやうな場合である。第二に、場面全󠄃體の形狀と相對的關係をもつてゐる。例へば、すらりとした姿󠄄の女が橫縞の着物を着たやうな場合、その橫縞は特に「いき」である。およそ橫縞は場面を廣く太く見せるから、肥つた女は橫縞の着物を着るに堪へない。それに反して、すらり