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Page:Iki-no-Kozo.djvu/106

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ば、兩眼の位置に基いて、水平󠄃は一般に事物の離合關係を明瞭に表はすものである。從つて、縱縞にあつては二線の乖離的對立が明晰に意識󠄂され、橫縞にあつては一線の繼起󠄃的連󠄃續が判󠄄明に意識󠄂されるのである。卽󠄁ち縱縞の方が二元性の把握に適󠄃合した性質をもつてゐる。なほまた、他の理由としては、重力の關係もあるに相違󠄄ない。橫縞には重力に抗して靜止する地層󠄃の重味がある。縱縞には重力とともに落下する小雨や「柳條」の輕味がある。またそれに關連󠄃して、橫縞は左右に延󠄅びて場面の幅を廣く太く見せ、縱縞は上下に走つて場面を細長く見せる。要󠄃するに、橫縞よりも縱縞の方が「いき」であるのは、平󠄃行線としての二元性が一層󠄃明瞭に表はれてゐるためと、輕巧精󠄃粹の味が一層󠄃