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重盛顧みて、諸弟をめて曰く、「今日の事、縱ひ公をして老耄して事を發せしむるも、子等何ぞ匡救せずして、乃之を慫慂するや」と。出でて將士をいましめて曰く、「公に從ひて院に赴かんと欲する者は、重盛のかうべを刎ぬるを見て、然して後行け」と。乃小松の第に還る。

旣に夜となり、憂慮してく能はず。是に於て令を出し兵をして曰く、「大事あり、速かに來り會せよ」と。衆相吿げて曰く、「沈重の人、此の如き令を出すは、必ずよし有らん」と。是に於て爭ひて之に赴く者、一夕に二萬餘騎なり。而して西八條復一人無し。重盛、乃家貞、貞能をして往きて淸盛を護らしむ。淸盛問ひて曰